
メーカー直営店だからこそ
福岡の特産食品・明太子はもともと、ご飯のお供に喜ばれる土産品として、味付け海苔とライバルの座を競っていたが、その後レストランの料理人たちが素材として活用するようになり、明太パスタ、明太フランス、めんたい重などの人気料理へ昇華させた。中でも生産メーカー直営のレストランは、明太子の鮮度や味の良さが群を抜いており、いわば生産者のプライドがそのまま美味しさに表れていると言える。つまり、明太子料理を食べるなら、メーカー直営店へ行けば間違いない。




つゆだくで味わい深い明太子で知られる『キフジ』の直営店が、なぜか天神や博多ではなく、街から離れた海沿いに建っているのには理由がある。木藤洋子さん(写真中左)は「キフジの創業者、私にとって義理の両親が、北崎・西浦の生まれなんです。その昔漁師町を離れて街で乾物屋を始めて(モノトーン写真)、そこから木藤商店に繋がるのですが、ずっとこの海沿いの土地を手放さずに所有していました。故郷の海への思い入れがあったんでしょうね」と語る。
2022年にオープンした「海のはなれ」は、キフジの明太の美味しさを如何なく発揮した食堂だ。”海で生まれた自然食”を掲げる通り、無着色で天然の旨味たっぷりの明太子を、炊きたてのごはんや茹でたてのパスタに合わせて、シンプルに食べるのが最高に美味しい。糸島半島という観光立地にありながら、誰もが気軽に食べられる価格に抑えているのも、故郷に近いこの場所への想いの表れなのだろう。


